こんにちは、ザリガニです。
皆さんは20代前半、学生時代に国民年金の保険料をどうしていたか覚えていますか?
私は「学生納付特例制度」という制度を利用して学生時代の保険料納付を猶予してもらっていました。
今回は、その猶予されていた国民年金保険料の追納をしないと決めた話です。
老年基礎年金の受給見込み額と追納額、65歳までの時間的猶予、現在の資産運用の状況などのバランスを勘案して判断しました。
自分が追納をしないと判断した理由とその経緯を記録しておきたかったこと、今後似た悩みを持った方の参考になればよいなと思ってこの記事を書きました。
それでは、どうぞ。
もくじ
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国民年金法をざっくりと
日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は、国民年金の被保険者となります。20歳になると保険料を納めることが国民年金法で定められています。
年金の資格期間が10年を超えると、国民年金を受給できるようになります。
年金の資格期間は以下のような期間を指します。
- 国民年金の保険料を納めた期間や免除された期間
- サラリーマンや公務員の期間(厚生年金保険や共済組合等の加入期間)
20歳から60歳になるまでの40年の全期間(480ヵ月間)で保険料を納めた人は、65歳から満額の老齢基礎年金が支給されます。
満額の年金額は、平成30年時で年額779,300円です。
年金の資格期間が20年間(40年の半分)だった場合、年金額は満額の半分、資格期間が10年間(40年の4分の1)だった場合は満額の4分の1が支給されます。
学生時代の年金保険料の支払いはどうしていた?
20歳から保険料の納付が必要になるとはいえ、学生時代は収入も少なく、きちんと20歳の時点から自力で払い続けられる人は少なかったのではと想像します。
皆さんも下記のいずれかにおそらく該当していたと思います。
- 自分または親が納めていた
- 「学生納付特例」を申請して、国民年金保険料の支払い猶予を受けていた
- 単純に納めていない(未納)
私のケースだと、2に該当します。今回の話のテーマになります。
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学生納付特例制度とは?
「学生納付特例制度」とは、在学中の保険料の納付が猶予される制度のことです。社会人となって保険料を納められるだけの収入ができるまで支払いを猶予してあげますよ、という仕組みです。
この制度でいう学生とは、大学・大学院、短大、高等学校、高専、特別支援学校、専修学校及び各種学校、夜間・定時制課程や通信課程の人などが含まれますので、ほとんどの学生の方が対象となります。
学生時代、私は大学と大学院修士課程に通っていました。私は8月生まれですので、20歳になった8月(大学3年生)から修士課程修了の3月まで合計で約44ヶ月分の年金保険料の支払いを猶予してもらっていました。
記憶は定かではないのですが、母がこの手続きをいつの間にか申請してくれていて、その旨を私に伝えてくれていました。今となっては感謝感謝です。
学生納付特例制度と保険料の未納は何が違う?
「学生納付特例制度による保険料支払いの猶予」と「単純な保険料の未納」とは何が違うのでしょうか? 以下にまとめました。
- 受給資格期間
- 学生納付特例期間中は老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の受給資格期間に算入される。
例えば、学生納付特例の期間が20~22歳の2年間あり、その後就職して保険料を納付し始めた場合、納付後8年で計10年となり、老年基礎年金を受け取れるようになる。 - 未納の場合、いずれの受給資格の期間にもカウントされない。
- 学生納付特例期間中は老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の受給資格期間に算入される。
- 年金額の計算
- 学生納付特例の猶予期間中も未納の場合も、年金額の計算には反映されない。
納付の違いについては、産経ニュースの記事にあった図が詳しかったので引用します。
引用元:産経ニュース:【ゆうゆうLife】年金「学生納付特例」 追納した方が得? 計算してみると…(2018.3.22)
追納とは?
学生納付特例によって、学生時の保険料の納付は最長で10年間猶予されます。猶予された保険料を事後的に追って納めることを、追納(ついのう)といいます。
大学生の場合だと、20~22、23歳は学生だった人も多いと思います。この期間に学生納付特例を申請しておくと、30~32、33歳までの10年間、保険料の支払いが猶予されることになります。この10年の期間中に、追納によって学生時の保険料をさかのぼって支払うことができます。
追納によって未納期間を減らし、老年基礎年金受給額を満額にする、あるいは満額に近づけることができます。
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老齢基礎年金の受給要件と額
20歳から60歳になるまでの40年間の全期間保険料を納めた人は、65歳から満額の老齢基礎年金が支給されます。
この480ヵ月間(=40年×12ヶ月)の全期間で保険料を納めると、65歳から年額779,300円(満額)の年金を受け取ることができます。
一方で、この期間に未納の期間があった場合、その期間分は年金額計算の対象とはなりません。私の場合、44ヵ月分の支払いが猶予されている状況なので、これを支払わずにいると将来の年金額は次のようになります。60歳まで納付を継続した場合で計算しました。
- 計算式:(年金の加入期間/480ヵ月)× 779,300円
- 私のケース:(480ヵ月ー44ヵ月)/ 480ヵ月 × 779,300円=707,864円
60歳まで納付を続けた場合、私は約71万円の年金を受給できることが分かりました。満額より約1割少ない額となります。
追納する場合の要件と額は?
学生納付特例制度を利用して保険料の支払いを猶予してもらっていた場合、過去10年にさかのぼって追納を行うことができます。
私の場合、支払いを猶予してもらっていた44ヶ月分を後払いすることで、将来の年金受給額を満額に近づけるということですね。
追納をする場合、1ヶ月分でおよそ15,000円を納付する必要があります。(年度によって若干の変動はあります。日本年金機構のサイトに参考額が記載されています。)
ですので、私の場合だと、44ヵ月×1.5万円=66万円分が追納できる最大額となります。
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追納をする・しないの判断基準
考える点は以下の通りです。
- 追納として66万円を納付して、将来の年金779,300円満額を狙う。
- 追納はせず、年額707,864円の年金を受け入れる。
この2択が自分にとってどちらにメリットがあるかを考えることになります。
追納を行うときのメリット
実際に上記の2択を比較する前に、1点考慮することがあります。
追納を行った場合、社会保険料控除により所得税・住民税が軽減されます。ですので、66万円の保険料を支払いますが、控除による税金の軽減で実質の支払い保険料は少なくなります。
私の場合、66万円分を社会保険料控除とすることで所得金額が抑えられ、所得税・住民税が約18.9万円軽減されることが分かりました。つまり、私の実質の追納額は47.1万円となります。
所得税・住民税の検討は、こちらのサイトで計算ができます。
なお、この控除を受けるためには年末調整または確定申告による申告が必要です。
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① 追納をする場合
私のケースだと、年金は満額だと779,300円、追納を行わない場合707,864円です。両者の差は年間およそ72,000円です。
65歳から年金の支給が始まりますから、長生きすればするほどこの金額の累積額の差は大きくなっていきます。80歳、85歳、90歳まで生きるとすると、年金支給額の差はそれぞれ約125万、164万、203万円となります。
私の場合、72歳以上に長生きすれば、追納実施パターンで元が取れることになりました。実質の追納額47.1万円についてモトがとれるのが72歳のタイミングだということです。(追納を実施すると年金額が72,000円増加し、72,000円×7年で約50万となり、追納額47.1万円を上回る)
② 追納をしない場合
一方で追納をしないパターンを考えます。
こちらの考え方はいくつか仮定を置いて計算をする必要があります。
本来納付に使われる予定だった47.1万円を資産運用に回したとします。
ちょっと保守的に見積もって35歳の時点で運用を開始し、65歳までに30年間の期間があるとします。47.1万円をある一定の利回りで運用し続けたときの損益分岐を計算しました。
追納を「した方が有利」、「しない方が有利」のパターンを以下の表にまとめました。また、追納をしない場合の損益分岐となる年齢を合わせて計算しました。
年齢 | 実質利回り(年率) | ||||
1% | 2% | 2.5% | 3% | 4% | |
70歳 | しない方が有利 | しない方が有利 | しない方が有利 | しない方が有利 | しない方が有利 |
75歳 | した方が有利 | しない方が有利 | しない方が有利 | しない方が有利 | しない方が有利 |
80歳 | した方が有利 | トントン | しない方が有利 | しない方が有利 | しない方が有利 |
85歳 | した方が有利 | した方が有利 | しない方が有利 | しない方が有利 | しない方が有利 |
90歳 | した方が有利 | した方が有利 | トントン | しない方が有利 | しない方が有利 |
損益分岐の 年齢 |
74歳 | 80歳 | 90歳 | 常に追納しない方が有利 | 常に追納しない方が有利 |
実質の利回りで2%で運用し続けると、80歳までは追納しない方が有利、2.4~2.5%の場合は90歳まで追納しない方が有利という結果になりました。
3%以上の利回りだと、どの年齢でも追納なしで運用パターンの方が有利です。
個人的には85歳くらいまで元気にいられたら十分だと考えています。なので、今後35歳から2.5%の利回りで運用を続けられるなら追納をしなくても不利益はないと判断できます。
例えば利回り3%の配当株を持っているとして、20%の税引きを考慮すると2.4%が実質の利回りになります。上の表では2.5%の結果を示していますが、2.4%でも同様の結果となることを確認しています。
連続増配株を選択すれば、30年以上という時間も味方にして更に有利に運用を行えます。税引き年率前3%を目標に運用ができれば追納なしで90歳まで問題はないということになります。
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おまけ:60歳以降の任意加入制度というオプションもあり
老年基礎年金を満額で受給したい場合のオプションに、任意加入制度というものがあります。
年金を満額で受け取るためには480ヶ月分の保険料の支払いが必要です。未納の期間がある場合、任意加入制度によって60歳から65歳までの間に追加で国民年金で加入することができます。
私の場合追納をしなかったら、44ヵ月の未納期間が残ることになります。この44ヵ月の分を60~65歳の間に納付することができます。
なお、注意点として再雇用などで60歳から65歳まで会社の厚生年金(公務員の場合は共済組合)に加入している人は任意加入制度は使えません。
終わりに
以上のように、検討の結果、私の場合では「追納をしない」という結論になりました。
- 追納額と将来の年金受給額のバランス
- 追納をしたと仮定したときの減税メリット(社会保険料控除による所得税・住民税の軽減)
- 現在の資産運用の状況と毎年の運用資金投入額
これらの点を判断材料にしました。また、将来私の考え方が変わって年金受給額を満額に近づけたいとなっても、任意加入制度を活用すれば良いと考えました。
この記事を作成するにあたって、追納の仕組みをいろいろ調べました。この過程で老齢基礎年金のことを体系立てて理解することができました。今は頭がとてもすっきりしています。
今回の記事は私の実例です。個人個人で所得や年金の加入期間はそれぞれ異なりますから、自分の場合はどうなるか気になる人はこちらの記事を参考にしてみてください。必要な情報と考え方についてまとめました。
それでは、また。